本の感想集積所

思い上がった読者が読み終わった後の興奮をぶつける場。※読んで半年ほど咀嚼してから書いています。書くために読み返すことはしていません。※基本的にネタバレへの配慮はしないのでご注意ください。

プフレとシャドウゲール考察 魔法少女育成計画より

プフレとシャドウゲールが好きだ。ほとんど2人の関係を愛していると言ってもいい。というかむしろ護を愛する庚江の気持ちに尋常でなく肩入れしている。平たくいえば護が好きだ。護を好きな庚江も好きだ。

今回はそんな2人の良さを垂れ流したい。

 

◆キャラクター紹介

まずは簡単にキャラクター紹介に挑戦してみる。

庚江と護は幼馴染であり、同じ高校に通う女子高生であり、2人の家はお嬢様とその使用人という関係だ。(尚、護の両親は庚江の誕生に合わせて庚江を守る存在として護を生んだという忠犬っぷり。)そしてプフレとシャドウゲールという魔法少女である。

プフレこと庚江(かのえ)…猛スピードで走る魔法の車椅子を操る魔法少女

シャドウゲールこと護(まもり)…(機械工作的にペンチを使って)何でも作れる魔法少女

2人とも戦闘特化型では全く無い。しかしプフレに限って言うならば、戦闘力は問題ではない。彼女の真の強みは頭脳だからだ。先見の明という言葉があるが、庚江にかかれば魔法とか抜きに素で正確な未来予知ができるんじゃないかレベルで頭が良い。ただ頭が良いだけではなく、目的のためには手段を選ばないキャラでもある。

そしてここが一番大事。護にはいい迷惑だが、庚江は護を非常に気に入っている。

 

◆2人の良さ

性質は狼(プフレ/庚江)と羊(シャドウゲール/護)なのに、プフレの方がシャドウゲールのことを100%純粋に愛している(愛情表現はともかくとして)のがいいし、シャドウゲールの方がプフレに対して愛憎悲喜交交、プフレ以外との関係性が希薄だから必然的にそもそも他人とプフレが比較の土台に乗らないところとかも大好きだ。尚シャドウゲールのぼっちさは半ば以上プフレがそう仕向けているところなんかも大変良い。常日頃庚江が護を守っているけれど、土壇場では必ず護が庚江を守るあたりもまた大変良く、結局のところ2人とも形は違えどお互いに共依存なのだ。

依存の形は様々だが、ここまでツボにハマる2人もなかなかいない。

 

さて、穏やかな話はここまで。以降はネタバレに触れるので注意されたし。

 

◆2人の最期

庚江が護を100%純粋に大好きで、一方護は庚江を愛してはいるもののそれだけではない複雑な、ほぼありとあらゆる感情の全部を庚江1人に対して抱いているあたりから、プフレが死ぬとしたらシャドウゲールに殺される以外の選択肢はないだろうなぁと早々に思っていた。なぜならプフレにとって、それが最も幸せであり、かつ最も不幸なことだからだ。

結局シャドウゲールにとって世界で一番大切な人が自分だったことを確かめる形で本人に殺されたプフレだが、そのような前提条件が無かったとしても、やはりプフレにとっての最高はシャドウゲールによる幕引きだ。加害者が他の誰であってもプフレには納得できないだろう。どのような感情の働きにしろ、シャドウゲールがもたらした殺意であればプフレにとっては喜びとなりうる。それだけの強い感情を向ける相手はプフレだけだから。一方、護を1人残して逝くことを心から案じる最期になることが庚江にとっての不幸だ。不安の中身はふたつ、庚江の守護無しで天然バカの気があり危なっかしい護が、本人の魔法の有用性にも関わらず低い戦闘能力による危険性も相まって、無事幸せに生きていけるのかという長期的なことと、庚江を殺したことで護が感じる否定的な感情の嵐についてだ。そうした"自分の存在を欠く護"に対する不安がプフレ最大の不幸となる。とはいえその不安すら護に対する愛情から来るものである以上、プフレが殺される瞬間に感じるのは結局のところ幸せなのだ。死ぬ最期まで庚江の関心は自分ではなく護にある。

 


違った角度から考えてみても、この結末は予想できる。

プフレにとっての最悪は自分が死ぬことではない。自分の目が黒いうちに護が死ぬことだ。賢いプフレはありとあらゆる手段をもってしてこの最悪を回避するだろう。つまり、庚江が生き残り護が死ぬは無い。

そしてプフレにとって次に最悪なのは自分が死ぬことだ。とはいえ賢いプフレはこの最悪も回避する。あのクラムベリーの試験でも2人揃っての生存をもぎ取ったプフレだ。他人に容易に殺されはしない。プフレを殺す目があるのは、灯台下暗しのシャドウゲールのみだ。

 


ではシャドウゲールがプフレを殺すことは護にとってどうなのか。護から見て庚江は存在理由だ。まず先立つのは衝撃、そして自責の念、その後に存在理由の喪失による空白だ。それらの否定的な感情の嵐を心折れずに抜けることができればだが、護にとって庚江の庇護を離れることは間違いなく新たな世界を開く行為になる。つまり、不安要素は多いものの、庚江の死を乗り越えられれば護にとって良い側面も孕んでいるのだ。

更に、あの賢いプフレが他ならぬ護のために、自分の死後に護を守る手段を生前に講じていないわけがない。

護の今後がどうなるかは、その庚江の安全対策も大きく影響するだろう。

 


とはいえプフレが欠けた時点で、本編におけるプフレ&シャドウゲールの黄金コンビも終了だ。今後シャドウゲールが再び日の目を見、活躍したとしても、それはもはやこれまでのシャドウゲールではない。それだけプフレの存在はシャドウゲールにとって大きいのだ。恐らく、プフレ自身が考える以上に。

2人のファンとして、冥福を祈りたい。