本の感想集積所

思い上がった読者が読み終わった後の興奮をぶつける場。※読んで半年ほど咀嚼してから書いています。書くために読み返すことはしていません。※基本的にネタバレへの配慮はしないのでご注意ください。

青崎有吾が好きだという話

ミステリ小説のジャンルの一画に青崎有吾作品がある。
現代を軸にした全体的に軽い口あたりの軽妙なミステリで、「失礼ながらお嬢様の目は節穴ですか」が殺し文句の謎解きはディナーの後でと同ジャンルという印象を持っている。
ちなみに私の目も節穴なのでミステリの巧拙はまるで分からぬままにアガサクリスティ→ルパン→怪人二十面相星新一西尾維新森博嗣と変遷して色々好きなのだが、各方面への無礼を承知で述べると、質としても謎解きはディナーの後でに勝るとも劣らないのでは?と思っている。ちなみにvs東川篤哉先生の作品だと、個人的な好きが加算されて青崎有吾作品群に軍配が挙がっちゃうぐらい好きだ。

この個人的に好きな感情の源泉は世代観にある。
スナック感覚で読める口あたりに加えて、一番特徴的だと感じているのは世代を反映しているところだ。
脱線するが、青崎有吾と同い年の作家に阿部智里が居るのだが、彼女は基本的に純和風ファンタジーを描いていてそちらはそちらで面白いが、現代の息吹ようなものは感じられない(代わりに日本史は疎いが室町時代みを感じられる)。
また、推し、燃ゆも世代の特徴を切り取って描いていて、あちらは重い印象。世代の特徴自体が主題なのに対し、青崎有吾作品は登場するキャラクターの背景とか小道具にジェネレーションが効いてるのがじわじわくるというか、ひとつひとつツボにハマる感じがしてとても良い。またそれにより登場人物に奥行きが出ているように思う。
例えば主人公の視点では探偵役と比較して優秀に見える妹が、実は大手動画サイトに中二病な歌詞の楽曲を自作してアップしてるとか。意外性が親しみを連れてくるところがとても好きだ。完璧な人なんていないんだよってメッセージを勝手に深読みできてしまうあたり、読み手に対する優しさがある気がする。

ここまでは○○の殺人(風ヶ丘シリーズ)の数冊を読んで感じた印象。

※○○の殺人の○○には館が付く場所が入る。図書館とか体育館とか水族館とか。あえて風ヶ丘シリーズと併記したのは、殺人じゃないタイトルの番外編も出ているため。

そこへきて、早朝始発の殺風景を読んでまた少し印象が変わった。
ただ面白かったところに、ほんのりした寂寥感のようなものが混ざった感じ。
早朝始発の殺風景自体は短編集なので、どの話がそうした印象を連れてきたのか具体的ではないが(むしろ全部?)、
※ここからはネタバレに抵触するのでご注意ください。









法で裁けない事件の被害とか重たいものが背景にあって、そこに対する復讐の内容に妥当性(法に照らすとそんなものは無いのだが)や納得感のようなものを私は見た。
その上で達成感などもあって、やはり読後感は爽やかなのだが、心に青いフィルターが一枚かかるような良い意味での淋しさもまた残った。

総じて青崎有吾作品には安心して読める安定感があると思う。是非また読みたい。

▼青崎有吾作品リスト
体育館の殺人
水族館の殺人
図書館の殺人
風ヶ丘五十円玉祭りの謎

早朝始発の殺風景

その他未読多数。



青崎有吾在籍中に明治大ミステリ研究会に所属してた奴まじ羨ましいぜ!