本の感想集積所

思い上がった読者が読み終わった後の興奮をぶつける場。※読んで半年ほど咀嚼してから書いています。書くために読み返すことはしていません。※基本的にネタバレへの配慮はしないのでご注意ください。

琅燦考察 十二国記 白銀の墟玄の月より

 


18年ぶりの十二国記、本編刊行に業界が沸いてます。祭りじゃ祭り。

白銀の墟 玄の月 1〜4巻を読み終わって感想を…言い始めるととにかく楽しすぎてきりがないので、感想については幸せな時間をありがとうございます、の一言に集約。

 


ただどうにも釈然としないあの人の心理について深掘りたく、読後にようやくわかる視点から内容を整理してみました。

まだ読んでない方は絶対に見ないでください。読み終わってからスクロールしましょう。

 


以降は徹頭徹尾ネタバレのオンパレードです。

特に白文字とかしてないので本当にスクロールしないでね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


まず2巻まで読み終わった段階でその人について思うのは、こいつヤバイ、好奇心に駆られて何でも踏み越えちゃう系のシリアルキラーじゃないか…です。

その印象が4巻ラストで変わる変わる。

読み終わってちょっと呆然としました。

生じたギャップを埋められるかなと思い、以下にまとめます。

 


以降考察!

 


- 琅燦考察 -

 

◆読み取れること

・天の摂理の空隙(王と麒麟が不在の状況下)に対する好奇心があった

・元黄朱のため忠誠心がとても薄い。一方で驍宗を戴唯一の王と認めている。

・驍宗麾下。恐らく驍宗が野に下った3年間で出会った人材=驍宗と一緒に下った厳趙ともども長い付き合い

・冬官の技術に対する敬意があり、阿選の朝において散逸を防ぐ目的意識があった

・妖魔のエキスパート黄朱として饕餮を下した幼泰麒を高く評価(?)していた。帰還後の成泰麒を散々化け物呼ばわりしている。

 


◆検討したい見解

阿選を唆して助ける一方で驍宗を支援する素振りも見せる琅燦の心理の矛盾について、証言している天の摂理に対する好奇心以外の観点から深掘りしたい。

具体的には以下の2点を検討。

 


A. 泰麒を試したい気持ちがある?

(尚阿選は途中から泰麒を驍宗と同じ好手敵と見做している)

 


B. 阿選をけしかけることで、驍宗が始めた冬狩を全うさせる意図があったか?

(これは花影が李斎に伝えた噂話より思いついた線です)

 


◆前提

琅燦=

・耶利の元公主

・青鳥の管玄さん

 


◆したこと時系列

★…驍宗寄りの行動

☆…阿選寄りの行動

どちらとも取れる行動には印無し

 


[失踪前=冬狩の折]

・李斎に幼泰麒を蚊帳の外に置かないよう諫めた&饕餮が使令にいることを確かめた

・阿選に王位は同じ姓の者が続かないと教えた

・簒奪を決めた阿選に幼泰麒の使令を引き離し、角を折るよう助言した☆

・〃妖魔を使う観点で助言した☆

 1. 賓満の使用
 2. 岩崩落豚さんの使用
(・もしかしたら文州で轍囲で函養山な点にも助言があったかもしれない)

 


[失踪後]

・石林観に青鳥を送り瑞雲観を止めるよう伝えた★

・瑞雲観と深い繋がりのある文州候の魂魄を妖魔に抜かせた☆

・阿選におもねる立場を活かして冬官を守った★

・たぶん厩の厳趙と協力して白圭宮から逃げたい官僚を逃している★

・阿選の朝の現状維持に貢献している(冢宰の張運の視点)☆

・阿選に教えた魂魄妖魔の使い方は危うい手法だった(耶利談)★

 


[成泰麒帰還後]

・幽閉された泰麒の琅燦に会いたいという要望に応じなかった

・新王阿選に対しあり得ないと耶利に言っている

・泰麒の狙いを勘繰る諸官に民を救いたいんだろう麒麟だからと云った

・阿選に会えば罵ってる★

・阿選に泰麒の帰還を伝えた

・新王阿選を確かめる手段として泰麒を阿選に斬らせた(ここで泰麒は琅燦味方と確信…なんでだよ!泰麒豪胆で頭キレすぎだよ、本当に逞しくなったよ…涙)★

・耶利を泰麒の元に遣わした/その際自分にできることはこのくらいが限度だった、泰麒の目的が自分の目的だと述べている★

・驍宗奪還に向かう帰泉にウサギさん妖魔を付けてキキの群れをおびき寄せた☆

・刑場から逃げた一行に計都を送り届けた★

 


◆結論

阿選の気持ちにいち早く気付き、事実だけを伝え阿選の行為を見守っている。この行為はたぶん阿選が驍宗に臣従することを受け入れられるかどうか、どちらに転ぶかを好奇心から観察したいためにわざとつついている。

 


阿選が簒奪を決めてからは、阿選の計略に乗ることで天の摂理に対する好奇心および泰麒を測ることができると考えて協力しているように見える。

驍宗に対しては、当初の計画が函養山への衣食住を伴うきちんとした幽閉だったことから犯行に踏み切るためのハードルが低かったものと思われる。(驍宗様なら大丈夫!ぐらいの気持ちでいそう…この4冊を経て読者も驍宗様なら大丈夫!の気持ちになりました)

 


失踪後は、激化する阿選の誅伐に対しどうにか阻もうとする意思が見える。

つまり人命を蔑ろにしているわけではない。

琅燦の中では人命>好奇心だったのではないか。

更に冬官府を守るため阿選に与するふりをしながらばれない範囲で驍宗の助けになる行為をちらほらしていると考えると、泰麒帰還後は現状維持に協力しているというのは見せかけで、心理的には王と麒麟神隠し実験から完全に離れていてもう渋々手伝ってる感じだったのではないか。

 


Aはあり、Bはなしってとこでしょうか。

それにしたって可愛かった幼泰麒への無残な仕打ちは無いですけどね…!鬼か

それだけ期待してたってことでしょうか…いやいや普通に死ぬるで…